横浜や神戸を思わせる港町、関門海峡を望む唐戸エリアで一番印象的だったのが、近代建築「旧秋田商会ビル(下関観光情報センター)」。
1915年(大正4年)に竣工した西日本初の本格的な鉄筋コンクリート(RC造)の洋風ビルなのですが、中に入ると和洋折衷のカラクリ世界が広がっています。
大正の富豪のこだわりと職人技、そして男のロマンがこれでもかと詰まった見どころ満載の館内をご紹介します!
屋上に松の木!?関門海峡を望む大正モダン建築

角地に立つ洋風ビルの屋上には円筒形の塔屋(ドーム)の上にさらに塔屋。実は竣工当時はすぐ近くまで海岸線が迫っており、この塔屋は下関港へ帰港する自社船を見つける物見櫓や、灯台としての役割を果たしていたそうです。
モダンな洋風ビルの屋上から、日本の象徴「松の木」がのぞいているのもおもしろいですね。

角地の円形塔が正面エントランス。

2階の窓のベランダ装飾、繊細なアイアンアートの柵、窓もモダンな洋風ですね。
重厚な鉄扉と埋め込み時計!1階オフィスの機能美

エントランスは2重扉になっており、これはもうかつての堅牢な銀行仕様ですね。

1階事務所は英国風、装飾をほどこした柱が並びます。

円弧を描くケヤキの一枚板で作られたカウンターは、その長さゆえに当時は大いに話題になったんだとか。
これは秋田商会が主に木材を扱っている総合商社であり、良質な木材が入手できたからだと言われているそうです。
他にもふんだんにマホガニーを使い、重厚な雰囲気をかもしだしています。

一番奥の階段へ続くエントランス上の美しい装飾をほどこした時計、110年を超えて今も時を刻んでいます。
宮大工が釘を使わず仕上げた「美しい木製螺旋階段」
奥にある美しい木製螺旋階段は、釘を一本も使わずに木を組み上げる「木組み(接木・組子)」という宮大工の高度な伝統技術で造られたもの。

天井に吸い込まれるような美しい曲線。

しかも1段ずつ装飾が施されているのがわかりますか?

鉄の支えはおそらく保護のための補強でしょう。 110年たっても美しいままに保たれているのは釘を使っていないからだと言われています。
妄想が暴走!「中2階の隠し部屋」

1階から吹き抜け上部の中2階の隠し部屋(書庫・物置スペース)へ上がるための階段。狭い急こう配の螺旋階段はセキュリティーの意味もあるんでしょうね。
美しさとともに怪しげな入口の雰囲気に妄想が一瞬にして暴走。
隠し部屋って何を隠してたの?
下関の朝鮮半島や満州との貿易港だった当時の状況ならご禁制の密輸?
灯台代わりの塔屋は”密輸船”に合図を送るため?
なんて歴史ロマンがグルグルと脳裏をよぎるも、当時の秋田商会は、国内外に多数の支店を持つ非常にクリーンで大規模な「一流の総合商社」だそうで、重要な書類などを保存していたそうです(笑)。

階段の横にはエントランスの上に見えていた2階の格子窓がありました。
厳重なセキュリティー

2階へ続く階段には鉄格子の扉が備えられ、警備も厳重だったようですね。

こちらは1階のカウンター内にも中2階の隠し部屋へ続く入口があるのですが、こちらも階段や扉があり簡単に入れないようになっていました。

2階の階段からは裏口も見渡せるようになっており、これももしかしたら出入りする人物を監視するためかもしれませんね。
大正時代のセキュリティーチェック、抜かりありませんね。
ギャップに衝撃!ビルのなかに広がる純和風大広間

階段を上がって2階、3階は格調高い本格的な書院造(しょいんづくり)、こちらも宮大工が腕によりをかけ、障子を外すと52畳の大広間になるそうです。

床柱や鴨居(かもい)などには、紫檀(したん)、黒檀(こくたん)、鉄刀木(たがやさん)といった、当時でも一般家庭ではまず使えないような高級な素材がふんだんに使われており、木材貿易で巨万の富を築いた圧倒的な財力とこだわりが伝わります。

木の廊下と天井、ここがコンクリートのビルということを忘れてしまう豪華な和空間。 この「和」と「洋」が同時に完璧に存在することこそが「旧秋田商会」の特徴といえるでしょう。

3階の畳の大広間に置かれていたリードオルガン、大正から昭和初期のものだそう。

「YAMAHA ORGAN」の古いロゴ、草花の彫り模様がはいっていますね。
贅沢の極み?「天空の日本庭園」

ビルを見上げると塔屋の隣に見える「松の木」。 なんとこの屋上には日本庭園が広がっており、ここで唐戸の海を眺めながら宴会が行われ、取引先などを招いていたんだとか。

そのために設置されたのがこちらの事務所ビルとして日本最古級(一説には日本初)と言われる手動式エレベーター!これで1階から屋上まで料理を運んでいたんだそうですよ。
屋上の日本庭園で海を眺めつつ入港してくる自社の船を自慢しながらお酒を飲み、温かい料理が魔法のようにササっと出てくる。
秋田寅之介という人物は粋で太っ腹な人物だったんですね。

古い電気スイッチも残されていました。
旧秋田商会ビルは誰が設計したの?
海運業で成した秋田寅之介氏が贅を尽くし、まさに当時の最先端技術を詰め込んだ「旧秋田商会ビル」の設計には3人がかかわっています。
- 西澤忠三郎:全体基本設計を担当(海軍技師)
- 秋田寅之介:施主であり、自身の海外経験からアイディアを提案
- 後藤柳作:2階・3階の本格的な和風住居(書院造)を担当した宮大工
当時の最新技術だった鉄筋コンクリート造の洋館(1階)の上に、伝統的な木造和風建築(2・3階)を載せるという極めて珍しい和洋折衷スタイルは、これらの人物たちの協力によって生まれました。
アクセス&駐車場
公共機関のアクセスは、JR下関駅からサンデン交通バスで約7分「唐戸バス停」すぐです。駅前のバス停1~4から出発するバスはすべて「唐戸」へ行きますよ。
無料駐車場は完備されていなので近隣のコインパーキングを利用しましょう。
おわりに
この記事では山口・唐戸の港町の繁栄を今に伝える「旧秋田商会ビル」をご紹介しました。
ゾクゾクするようなすてきなスポットで、この記事を書くのに色々と調べると紹介しきれないくらいに興味深い歴史ロマンが詰まったビルでした。
屋上庭園など限定開放もされるそうなので、またぜひ伺いたいですね。
*2026年5月訪問撮影
英語要約(English Summary / Description)
Explore Former Akita Shokai Building in Shimonoseki, Yamaguchi. Built in 1915, West Japan’s oldest surviving reinforced concrete office building uniquely fuses a Western-style facade with a authentic Japanese-style interior on its upper floors. Highlights include a nail-free wooden spiral staircase crafted by shrine carpenters, a secret mezzanine storage room, and a roof garden featuring Japan’s oldest manual dumbwaiter elevator.
「旧秋田商会ビル」の施設情報・アクセス
【施設名】旧秋田商会ビル(下関観光情報センター)
竣工:1915年(大正4年)
設計:西澤忠三郎(にしざわ ちゅうざぶろう)
住所:山口県下関市南部町23-11
アクセス:JR下関駅からサンデン交通バスで約7分「唐戸」下車徒歩すぐ
>>Google mapで場所を確認する
電話:083-231-1350
営業時間:9:30~17:00
定休日:火曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始
入館料:無料
駐車場:なし(近隣コインパーキング利用)

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